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FEM(有限要素法)を用いた盛土の影響検討
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造成などで盛土や切土を行うと、周辺の地盤に沈降や隆起、横方向への移動などの変形が生じ、既設構造物に影響を与える場合があります。
このため施工前に、周辺の地盤に与える影響を把握することを目的として解析を行うための一手法として、FEM(有限要素法)による変形解析があります。
地盤を対象とした有限要素法(FEM)による変形解析には、地盤を弾性体とみなす線形弾性解析と、土の降伏後の塑性変形を表現できる弾塑性解析があります。
軟弱地盤を対象として変形解析を実施する場合、弾塑性解析を用いるのが適切ですが、施工速度や排水条件に応じて変化する軟弱地盤の変形挙動を表現する場合には、有効応力法による弾粘塑性解析が必要となります。
ここでは、鉄道(線路)の近くで盛土をした場合、施工速度による変形挙動を表現できる弾粘塑性解析による FEM 解析の例をご紹介します。
  1. 検討条件およびモデル化
図 1 に解析断面・解析モデルおよび施工ステップ図を示します。
解析断面に用いる現状の地層区分は、 ボーリング調査や原位置試験および室内土質試験結果を基にして設定します。
次に、計画される施工に合わせ、施工ステップを設定し、解析モデルを作成します。
計画盛土については 30cm/3 日を 1 ステップとし、付帯する擁壁は施工期間を設定してモデル化します。
解析の目的は線路への影響の把握であるため、変位の着目点を各線路の枕木両端と中央に設定してい ます。

  2. 各ステップの解析
各ステップの解析結果を示す模式図を図2に示します。各ステップは、図1中の施工ステップに対応します。
また、ステップM〜Oは、施工後の放置期間を 1 年、3 年、5 年としたものです。


  3. 解析結果
図3(着目点最大変位図)によると、着目点 1〜6 において最大水平変位(Xmax)は 4.4〜6.4mm、最大 垂直変位(Ymax)は 2.2〜5.3mm となり、盛土に近いほど、変位量が大きくなる解析結果が得られました。



図4(継時変化図)によると、およそ 1年で水平変位、鉛直変位共にほぼ収束する予測となります。
施工開始から100日までの経時変化を追うと、変位量のピークは盛土6段目後と予測されます。
その後、一旦盛土を止めて擁壁構築を行うために変位量は減少しますが、盛土を再開すると、7〜8 段目で変位量が増加します。
ただし、9〜10 段目の盛土は線路から遠ざかるため、変位量の増加は小さくなり、その後変位量は減少し収束する方向に転じます。
以上のように、解析によって変位量や時期の予測を行い、工事の安全性の評価を行なうことができます。